痛みに関して

整形外科疾患の痛みについて(院長の考えで一般的な考え方ではありません

整形外科疾患での痛みの感じ方は下記の組み合わせによると考えております。
 ①病気そのものから生じる痛み
 ②fasciaの緊張から生じる痛み
 ③脳での痛みの感じ方、その他の影響

①の痛みは、整形外科の教科書に記載されている一般的な考え方で、病名に相当する部位が痛みを発すると考えます。その治療として痛み止めが処方されたり、リハビリ等による保存療法がまず行われます。保存療法を行っても症状が強い場合は、原因と考えられる部位を手術で治療する場合もあります。

②による痛みの代表として肩こり、腰痛があります。これらは自然に生じる病気でなく、姿勢等で首や腰の支持する筋組織に負荷が加わりfasciaの異常な緊張が生じて痛む状態です(患者さん自身が作った何々しすぎの状態です)。ストレッチしたりマッサージを受けても改善しない状態では、fasciaの異常な緊張が生じています。これらはトリガーポイント注射を使ってfasciaの緊張を解除する事で治ります。病気ではないため一瞬で痛みがなくなる事もあります。病院で処方された痛み止めではあまり変わらなかったが、整骨院やカイロプラクティックへ行ってよくなるのも②の痛みが解消されたためです。当院ではトリガーポイント注射による治療を行っておりますが、医療としては博田節夫先生の考案されたAKA-博田法による関節運動学的アプローチでは仙腸関節を中心とした関節の動きを改善することでfasciaの異常な緊張が解除されます、他に橋本敬三先生の操体法はからだの歪みを解消することで張りがとれます。民間療法では骨盤矯正や体を揺らしたり、脱力をすることや体に軽く触れる事で張りをとる方法も色々考え出されています。鍼治療でもfasciaの緊張を解除する事も出来ます。fasciaの異常な緊張を解除しても痛みがすぐになくなるとは限りません。治療後すぐに楽になったと喜ぶ人もいれば、1-2週間で痛みが減少するのがわかる人もいます。

③は痛みの感じ方の問題です。痛みは自覚症状ですので感じ方に個人差があります。体には元々「下行性疼痛抑制系」とよばれる痛みを押さえる機能がありますが、精神的苦痛、不安、ストレスの影響でこの抑制機能の働きが弱くなり痛みを強く感じます。また痛みには性格が関与するともいわれ、性格テストでは神経症的傾向の人は痛みを感じやすいと報告されております。パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)ではうつ病、不安症等の精神科領域の症状以外に身体症状として痛みとして出る場合もあります。疫学調査で約10%の人が何らかのパーソナリティ障害に該当するといわれていますが、パーソナリティ障害の人は、自分の思考や行動に問題があるとは考えていない場合があり、自分に不都合な事をいわれると攻撃的になる人もいます。(ネットの口コミで医者の悪口を書いたり、極端に低い評価をするような人もこの部類です、他業種の店舗の評価と比較し病院やクリニック特に整形外科や精神科、心療内科が極端に低い評価になるのはこのような理由がありますので医療機関を探す場合はこのあたりを考慮してください)。③の痛みに対しては当院での注射による治療では当然改善しません。そのため他の医療機関での治療を勧めております。


当院の痛みの治療

一般的には痛みの治療は消炎鎮痛剤が広く使われます。文字通り痛みの原因となっている部位の炎症を抑える治療薬です。上記の①による病気に伴う痛みで痛風、偽痛風による関節炎や肩の石灰沈着性腱板炎等は炎症所見がはっきりしているため消炎鎮痛剤がよく効きます。神経障害性疼痛治療薬は、神経伝達物質の過剰放出を抑えることで痛みをやわらげるため神経痛によく使われます。ブロック注射は神経の走行部に麻酔薬を注射することで交感神経の緊張や神経の興奮状態を和らげ「痛みの悪循環」を絶つ役割をします。
病気による痛みと診断されても実は②のfasciaの緊張が強いために痛みを強く感じている事がよくあります。
例えば腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の症状で下肢痛がある場合、ヘルニアが大きく神経を強く圧迫していればそのヘルニアを手術で摘出すればよいですが、ヘルニアの関与は小さく仙腸関節周囲のfasciaの緊張が強く坐骨神経の走行を締め付けている場合もあります。この場合は②のfasciaの緊張をトリガーポイント注射で解除すると痛みが軽減します。五十肩で肩が動かせない場合も首のfasciaの緊張をトリガーポイント注射で解除すると動かしやすくなる事が多いです。
肩こりや腰痛として自覚症状のある人には②の関与を説明するとよく理解してもらえますが、自覚症状のない場合は当院の治療の考え方が理解されていない事もあり、根本的な治療をしていても痛み止めの注射で痛みが軽減したと誤解されたりします。(症状が出たらまずは一般の整形外科を受診してみてください)
注射でfasciaの異常な緊張を解除すると多くの人は初診時の1回の治療で終わる事が多いですが、改善がみられまだ痛む場合は2週から4週間後に再度注射する人もいます。②に対するトリガーポイント注射での治療で改善の見られない場合はトリガーポイント注射による治療の対象外ですので、①に対しての一般の整形外科での治療法や③に対しての精神科や心療内科での治療を勧めております。
fasciaの緊張度合や関節の微妙な抵抗感を観察した上でこういった治療の経験を重ねると、今まで①の病気による痛みと考えられていた症状もfasciaの異常な緊張が関与する事が非常に多いことがわかってきましたし、民間療法で改善したりする理由も解明することができました。
こちらに書かれている事は一般論ではなく当院院長の考えです。